場を暖める。
ちょっと前の話ですが、昨年暮れにM-1グランプリが再開されました。全国から数千組の漫才師が予選に参加し、決勝まで勝ち抜いた8組によってその年のチャンピオンを決めるコンテスト番組です。もともと私はお笑いが好きで大いに楽しみました。
昨年の優勝は、若くして髪の毛が寂しくなった二人組のトレンディエンジェル。しっかり笑わせてもらいました。でもこの二人、実は準決勝で敗退し決勝の8組には入っていませんでした。しかし敗者復活戦を勝ち抜いて、急遽当日に決勝に加わることができたのです。そして会場を笑いの渦に巻き込み、あれよあれよと言う間に優勝!
この結果にいろんなところから、さまざまな意見がありました。というのも敗者復活者は8組の決勝出場者が出番を終えた最後に演じたのです。つまり会場はそれまでに十分なほど笑い慣れ、いわゆる「場が暖まった」状態での出番だったのです。
確かに決勝ともなれば出演者の芸人はもちろん、審査員も会場の観客も最初は緊張しているものです。そして一組一組と出演者が変わるたびに会場中が笑いに対しての緊張もほぐれ、同じネタを披露しても最初と最後に演じるのでは会場の笑いは大きく違ってきます。
だから敗者復活組は最初に出演しないと栄えある決勝出場者に対して失礼というか、かなりのハンディを与えられたことと同じになってしまうという意見でした。
さすがに決勝戦ともなれば、全く知らない芸人でもしっかり笑わせてくれます。全出場者のレベルの差はほとんどないと言っても過言ではありません。その中でトレンディエンジェルは実力はもちろん、運にも恵まれた優勝だったと私には思えました。
「場を暖める」ことの大切さはM-1だけではなく、さまざまな採点競技(体操やフィギュアスケートなど)でも言われています。
同じように先生と患者さんの関係も「暖める」ことはとても意味があると思います。初診で緊張している患者さんの心をほぐし、十分な意思疎通を図ることで患者さんの先生に対する気持ちは大きく変わって来ると思うのです。
いくら先生が一生懸命説明をしても患者さんが固く心を閉じてしまっているとその先生の気持ちは伝わらないのです。
いかにしてその気持ちを伝えるか。
そのためのツールとしてニュースレターが果たす役割は決して小さくはありません。先生がニュースレターで自己開示をすればするほど患者さんの気持ちはどんどん暖まります。先生と患者さんは芸人と観客の関係と何ら変わることは無いのです。